Architectural Workshop Hieizan 2017 DOCUMENT BOOK
建築学生ワークショップ比叡山2017 ドキュメントブック


版型: A4判
頁数: 128頁(カラー84頁 モノクロ44頁)
2017年開催の聖地は、比叡山。全国から集った50名の大学生が、建築の実現化を図る。

定価: ¥1852(税別)
9月15日発売

8/27(日) 公開プレゼンテーション
     
     

8/27(日) 公開プレゼンテーションを行いました。
会場には多くの方にお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。

講評者の先生方には、学生たちが制作したフォリーを現地で体感いただき、講評していただきました。


group 1 残したい場 group 2  終わらない場所
     
group 3  諸行無常の支えあり   group 4 繋
     
group 5  円と縁   group 6 気づくべきもの
     
group 7  永劫回帰   group 8  移ろいの中で見えるもの

 


     

     

審査の結果、最優秀賞、優秀賞、特別賞が決められ、賞状とトロフィーが授与されました。
最優秀賞: group 8 移ろいの中で見えるもの
優秀賞  : group 4 繋
特別賞  : group 7 永劫回帰



全国の大学生たちが小さな建築を、比叡山・延暦寺に8体実現。


フライヤー
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プレスリリース
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参加募集パンフレット
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延暦寺は「古都京都の文化財」の一環としてユネスコの世界遺産に登録された、京都市と大津市にまたがる天台宗総本山。現在も、籠山行や千日回峯行などの厳しい修行が現代まで続けられている日本仏教の代表的な聖地において、2017年夏、建築学生ワークショップを開催します。

国宝根本中堂「平成の大改修」始まりの年に聖地を受け継ぐ
建築学生ワークショップ比叡山2017 公開プレゼンテーション

今春に全国から公募にて募りました、建築や芸術、環境デザインを学ぶ国内外の参加学生ら約50名が、合宿(期間:8月22日から8月28日)にて比叡山延暦寺に滞在し、比叡山の歴史文脈に基づいた小さな建築を8体、8月27日(日)比叡山延暦寺境内・根本中堂周辺に実現します。
また8月27日(日)12時より、比叡山延暦寺 延暦寺会館にて開催される公開プレゼンテーションでは、参加学生たちの提案意図や制作の創意工夫を発表し、国内外で活躍する建築家をはじめとした全国の大学で教鞭を執られる先生らによる講評会を開催します。

大学や専攻、年齢も異なる次世代を担う参加学生たちが、歴史的に貴重な原風景を持つ比叡山の環境に触発され、6月より現地のリサーチを重ねた経験に基づき、合宿による地域滞在型での制作ワークショップにより、柔軟な発想により制作した作品と発表、そして厳しくも温かい講評者の貴重なコメントを合わせてお聴きください。豊かな発想力のもと実現した小さな建築空間に存在する、新たな価値の発見に迫ります。



8/27(日)公開プレゼンテーション会場 比叡山延暦寺 延暦寺会館

【参加予定講評者】
建築・美術両分野を代表する評論家をはじめ、第一線で活躍をされている建築家や世界の建築構造研究を担い教鞭を執られているストラクチャー・エンジニアによる講評。 また、近畿二府四県の大学で教鞭を執られ、日本を代表されるプロフェッサー・アーキテクトにご参加いただきます。
五十嵐太郎 (いがらし たろう)
建築史家・建築評論家 / 東北大学 教授
1967年生まれ。1992年、東京大学大学院修士課程修了。博士(工学)。現在、東北大学教授。 あいちトリエンナーレ2013芸術監督、第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナー、「戦後日本住宅伝説」展監修、「3.11以後の建築展」ゲストキュレーター、「みんなの建築ミニチュア展」プロデュースを務める。第64回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。『日本建築入門-近代と伝統』(筑摩書房)ほか著書多数。
芦澤竜一 (あしざわ りゅういち)
建築家 / 滋賀県立大学 教授
1971年神奈川県生まれ。94年早稲田大学卒業。94-00年安藤忠雄建築研究所勤務。01年芦澤竜一建築設計事務所設立。2015年より滋賀県立大学教授。主な受賞歴として、日本建築士会連合会賞、サスティナブル住宅賞、JIA環境建築賞、SDレビューSD賞、渡辺節賞、芦原義信賞、LEAF AWARD,ENERGY GLOBE AWARD、FuturArc Green Leadership Awardなど。
石川亮 (いしかわ りょう)
美術家 / 成安造形大学 研究員
1971年大阪生まれ。交通インフラやのそのシステムの興味から作品制作を始める。近年は国内の神仏にゆかりのある地に出向き、その場所の持つ性質やルーツを探ることが作品制作の糸口になっている。近作に地域伝承や地名をもとに名付けられた湧水を収集した作品「全体‐水」は個々の水が混ざりあい一つになるプロセスを作品にしている。宗教観と自然観を生活の中に取り込み、自然と対峙しながらも共存してきた日本人の感覚に注目している。
新井清一 (あらい きよかず)
建築家 / 京都精華大学 教授

1983年南カルフォルニア・建築大学(SCI-ARAC) MA取得。2004慶応義塾大学政策・メディア研究科博士後期課程修了。1990〜1991年Associate Architectとし米国、MORPHOSISにて数々のプロジェクトに参加。帰国後ARAI ARCHITECTSを設立。1995年より京都精華大学助教授を経て現職。京都市立芸術大学、北京北方工業大学客員教授。USA., Russia, Armenia, China, Japanを始め各国に於いてコンペ及び受賞多数。
西沢大良 (にしざわ たいら)
建築家 / 西沢大良建築設計事務所 主宰
1964年東京生まれ。主な作品は、砥用町林業総合センター(2004)、沖縄KOKUEIKAN(2006)、駿府教会(2008)、宇都宮のハウス(2009)、直島宮浦ギャラリー(2013)、今治港再生事業(進行中)ほか。主な論文は、現代都市のための9か条(新建築2011年10月号、同2012年5月号)、木造進化論(西沢大良木造作品集2004-2010/inax出版)、立体とアクティビティ(西沢大良1994-2004/toto出版)ほか。主な受賞は、AR-AWARD最優秀賞(英国)、ART&FORM最優秀賞(米国)ほか。作品集は、西沢大良1994-2004(toto出版)、西沢大良2004-2010木造作品集(inax出版)。
遠藤秀平 (えんどう しゅうへい)
建築家 / 神戸大学大学院 教授
1960年滋賀県生まれ。1986年京都市立芸術大学大学院修了。1988年遠藤秀平建築研究所設立。2004年ザルツブルグサマーアカデミー教授。2007年〜神戸大学大学院教授。主な受賞暦:1993年アンドレア・パラディオ国際建築賞、2000年第7回ヴェネツィアビエンナーレサードミレニアムコンペ金獅子賞、2003年芸術選奨文部科学大臣新人賞、2004年第9回ヴェネツィアビエンナーレ金獅子特別賞、2012年日本建築家協会賞、2015年公共建築賞、2016年日本建築学会教育賞。
南條史生 (なんじょう ふみお)
美術評論家 / 森美術館 館長
1964年東京生まれ。主な作品は、砥用町林業総合センター(2004)、沖縄KOKUEIKAN(2006)、駿府教会(2008)、宇都宮のハウス(2009)、直島宮浦ギャラリー(2013)、今治港再生事業(進行中)ほか。主な論文は、現代都市のための9か条(新建築2011年10月号、同2012年5月号)、木造進化論(西沢大良木造作品集2004-2010/inax出版)、立体とアクティビティ(西沢大良1994-2004/toto出版)ほか。主な受賞は、AR-AWARD最優秀賞(英国)、ART&FORM最優秀賞(米国)ほか。作品集は、西沢大良1994-2004(toto出版)、西沢大良2004-2010木造作品集(inax出版)。
幸家大郎 (こうけ たろう)
建築家 / 幸家大郎建築研究所 主宰
1967年広島生まれ。1991年九州芸術工科大学芸術工学部環境設計学科卒業。1996年クランブルックアカデミーオブアーツ(USAミシガン州)建築専攻修士修了。1991~1993年吉田保夫建築研究所。帰国後、幸家大郎建築研究所開設。地域へのワークショップを通してのコミット、2005~2008年建築合同ワークショップ主催など。大阪市立大学工学部非常勤講師。
竹原義二 (たけはら よしじ)
建築家 / 無有建築工房 主宰
1948年徳島県生まれ。建築家石井修氏に師事した後、1978年無有建築工房設立。2000~13年大阪市立大学大学院生活科学研究科教授。現在、摂南大学理工学部建築学科教授。日本建築学会賞教育賞・村野藤吾賞・都市住宅学会業績賞・こども環境学会賞など多数受賞。住まいの設計を原点に人が活き活きと暮らす空間づくりを追求している。著書に「無有」「竹原義二の住宅建築」「いきている長屋」(編著)「住宅建築家 三人三様の流儀」(共著)。
  長田直之 (ながた なおゆき)
建築家 / 奈良女子大学 准教授

1968年名古屋生まれ。90年福井大学工学部建築学科卒業。90-94年安藤忠雄建築研究所。94年ICU一級建築士事務所設立。2002年文化庁新進芸術家海外留学制度研修によりフィレンツェ大学留学。2007年より東京理科大学非常勤講師、2008年より奈良女子大学住環境学科准教授に着任、現在に至る。2016年、横浜国立大学Y-GSA先端科学研究員特任准教授。主な受賞歴として2014年 "Yo" にてJIA新人賞。他、JIA関西建築家新人賞、95, 96, 99年SDレビュー入選など。
江村哲哉 (えむら てつや)
構造家 / アラップ 構造エンジニア
1983年愛知県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院工学系研究科修了。2008年Arup入社、東京事務所勤務。主な担当作品に東北大学ブックカフェ、V&A Museum of Design Dundee、狭山湖畔霊園管理休憩棟、狭山の森礼拝堂、大分県立美術館、おりづるタワー、直島ホール、静岡県富士山世界遺産センターなど。2012年より東京芸術大学ゲスト講師、2015~2016年武蔵野美術大学非常勤講師。
  平田晃久 (ひらた あきひさ)
建築家 / 京都大学 准教授

1971年大阪府に生まれる。1994年京都大学工学部建築学科卒業。1997年京都大学工学研究科修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務の後、2005年平田晃久建築設計事務所を設立。2015年より京都大学准教授就任。主な作品に「桝屋本店」(2006)、「Bloomberg Pavilion」(2011)等。第19回JIA新人賞(2008)、Elita Design Award(2012)、第13回ベネチアビエンナーレ国際建築展金獅子賞(2012、日本館)、等受賞多数。2016年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)にて"Japanese Constellation"展(2016)参加。
腰原幹雄 (こしはら みきお)
構造家 / 東京大学生産技術研究所 教授
1968年千葉県生まれ。2001年東京大学大学院博士課程修了。博士(工学)。構造設計集団<SDG>を経て、12年より現職。構造的視点から自然素材の可能性を追求している。土木学会デザイン賞最優秀賞、日本建築学会賞(業績)、都市住宅学会業績賞など多数の賞を受賞している。主な著書に「日本木造遺産」(世界文化社)、「都市木造のヴィジョンと技術」(オーム社)、「感覚と電卓でつくる現代木造住宅ガイド」(彰国社)などがある。
  平沼孝啓 (ひらぬま こうき)
建築家 / 平沼孝啓建築研究所 主宰

1971年 大阪生まれ。ロンドンのAA スクールで建築を学び、99年 平沼孝啓建築研究所設立。主な作品に「東京大学くうかん実験棟」や「D&DEPARTMET PROJECT」の作品などがある。主な受賞にイノベイティブ・アーキテクチュア国際建築賞(イタリア)や ウッド・アーキテクチャー・アワード(アメリカ)など、国内外でも多数の賞を受賞している。09年 国立国際美術館(日本)、14年 ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)国際建築展、15年 ストラクチュア・オブ・ソート オリス・ザグレブ展(クロアチア)。
櫻井正幸 (さくらい まさゆき)
旭ビルウォール 代表取締役社長
1960 年生まれ。1983 年 千葉大学建築工学科卒業。1985 年 千葉大学大学院工学研究科 建築学専攻修了。1985 年 旭硝子株式会社入社 中央研究所。1990 年 旭硝子ビルウォール株式会社の創立により出向。2007 年 旭ビルウォール株式会社(株式譲渡による社名変更)常務取締役。2014 年 旭ビルウォール株式会社代表取締役社長、現在に至る。
  藤木庸介 (ふじき ようすけ)
建築家 / 滋賀県立大学 准教授

1968年生まれ。97年Univ. of East London 修了・(M. Arts)。09年和歌山大学大学院システム工学研究科博士後期課程 修了・博士(工学)。和歌山大学助手、京都嵯峨芸術大学准教授を経て、12年より現職。04年より遊工舎一級建築士事務所主宰。主な作品「ISビル」「住吉の住宅」他。主な著書『住まいがつたえる世界のくらし』(世界思想社)『生きている文化遺産と観光』(学芸出版社)他。
佐藤淳 (さとう じゅん)
構造家 / 東京大学 准教授
1970 年愛知県生まれ。00 年佐藤淳構造設計事務所設立。東京大学准教授(AGC 寄付講座)。作品に「共愛学園前橋国際大学4号館 KYOAI COMMONS」「プロソリサーチセンター」「武蔵野美術大学美術館・図書館」「地域資源活用総合交流促進施設」 「ヴェネチアビエンナーレ2008」。著書に「佐藤淳構造設計事務所のアイテム」。建築家との協働で、数々の現代建築を新たな設計理念によって実現させてきた。
  本多友常 (ほんだ ともつね)
建築家 / 摂南大学 教授

1948年東京都生まれ。72年早稲田大学大学院修了。72年-98年竹中工務店設計部。(77-79年 Architectural Association School of Architecture卒業)。98年-2013和歌山大学教授。2013年より摂南大学特任教授,和歌山大学名誉教授。主な著書:「建築ノート」(新建築社),「ゆらぐ住まいの原型」,「建築概論」(学芸出版社)。主な受賞歴:日本建築学会賞(業績),日本建築家協会優秀建築賞, 大阪府知事賞 ,日本建築士会連合会優秀賞。
陶器浩一 (とうき ひろかず)
構造家 / 滋賀県立大学 教授

1962年生まれ。86年京都大学大学院修了。86~2003年日建設計。03年滋賀県立大学助教授 06年教授。作品:キーエンス本社研究所,愛媛県歴史文化博物館,愛媛県美術館,兵庫県芸術文化センター,積層の家,清里アートギャラリー,澄心寺庫裏,海光の家,半居,福良港津波防災ステーション,竹の会所,さとうみステーションなど。受賞:JSCA賞,Outstanding Structure Award(IABSE),松井源吾賞,日本建築学会賞(技術),日本建築大賞,日本建築学会作品選奨など。
  横山俊祐 (よこやま しゅんすけ)
大阪市立大学大学院 教授

1954年生まれ。1985年 東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻博士課程修了。同年 熊本大学工学部建築学科助手。2004年大阪市立大学大学院助教授。2005年より現職。主な著書:「住まい論(放送大学教育振興会)」「これからの集合住宅づくり(晶文社)」等。主な作品:「大阪市立大学高原記念館」「水上村立湯山小学校」「八代市営西片町団地」等。
瀧野敦夫 (たきの あつお)
構造家 / 奈良女子大学 講師
1979年兵庫県生まれ。2002年大阪大学工学部地球総合工学科建築工学科目卒業、2004年大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻博士前期課程修了、2005年大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻助手、2007年地球総合工学専攻助教を経て、2012年より奈良女子大学生活環境学部住環境学科講師。博士(工学)。専門は木質構造、耐震構造。
  吉村靖孝 (よしむら やすたか)
建築家 / 明治大学 特任教授

1972年愛知県生まれ。97年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。99年〜01年MVRDV在籍。05年吉村靖孝建築設計事務所設立。13年〜明治大学特任教授。 主な作品は、窓の家(2013)、中川政七商店旧社屋増築(2012)、鋸南の合宿所(2012)、中川政七商店新社屋(2010)、Nowhere but Sajima(2009)、ベイサイドマリーナホテル横浜(2009)等。主な受賞は、JCDデザインアワード大賞、日本建築学会作品選奨、吉岡賞ほか多数。主な著書「ビヘイヴィアとプロトコル」、「EX-CONTAINER」、「超合法建築図鑑」等。

7/22(土) 提案作品講評会

1 泊 2 日で、ご協力をいただきました「比叡山・延暦寺会館」にて宿泊をさせていただき、「提案作品講評会」と「実施制作打合せ」による具体的な施工方法の検討会を開催しました。 
 

1 日目には、各班より提案作品の発表を行い、技術者合宿指導の中心を担われる施工者代表者、そして、日本を代表される多くのプロフェッサー・アーキテクトや、ストラクチャー・エンジニアによる講評会を実施しました。  
 
 
制作候補地の視察・調査
 
  講評の様子
 
 
講評の様子
 
  各班長へ質疑応答
 
 

7/23(日) 実施制作打合せ

2日目には、各班の設計趣旨と、前日の講評結果を受け継ぎながら、関西を中心とした、建築士の皆さんや施工管理技師の方々、地元の大工さんや技術者の方々、そして地元の職人の方々にも古典的な工法を伝えていただきながら日本を代表するような組織設計事務所、施工会社による技術指導により、多くの技術者をアドバイザーに迎え、各班の制作準備となる素材決定や加工方法、実制作の準備や発注、試作から完成に向けた具体的な施工方法の検討会を実施しました。 
 

 
1班への制作アドバイス
 
  2班への制作アドバイス
 
 
3班 敷地の下見・調査
 
  4班への制作アドバイス
 
 
5班への制作アドバイス
 
  6班への制作アドバイス
 
 
7班 敷地の下見・調査
 
  8班への制作アドバイス
 

6/24(土) 現地説明会・調査

現地にて、各計画候補地の視察と調査を行い、課題テーマに対するコンセプトを発表しました。
はじめに主催者より、開催概要、経緯、開催地の説明を行い、開催テーマを発表しました。延暦寺 武さんから比叡山について、成安造形大学の石川さんに地域環境、歴史、文化的特性についてお話しをいただきました。その後は現地をご案内いただき、各班の計画地を決定しました。後半では、現地で感じたことから、地域住民にとって、あるいは地球環境にとって何が本当に必要なことなのか、そのための手段や方法を検討し、具体的な提案まで構想を進めました。
 

集合写真  
 
 
延暦寺・武主事から比叡山延暦寺についてレクチュア
 
  粟田建設・粟田会長によるレクチュア
 
 
河村社寺工殿・河村代表によるレクチュア
 
  制作候補地の視察・調査 延暦寺・武主事による解説
 
 
制作候補地の視察・調査 成安造形大学・石川先生による解説
 
  旭ビルウォール・櫻井社長によるレクチュア
 
【開催記念 説明会・講演会】
ワークショップの参加募集の説明会と、開催を記念して活躍中の建築家にレクチュアしていただきました。
東京会場 
東京大学(弥生キャンパス)

農学部
弥生講堂アネックス

東京メトロ南北線「東大前駅」徒歩3分
東京メトロ丸の内線・大江戸線「本郷三丁目駅」徒歩10分

5月11日(木)18:30-20:00(18:00開場)
入場無料|定員: 先着100名|要申込


基調講演 西沢大良 (建築家)
1964年東京生まれ、建築家・大学教授。主な作品は、砥用町林業総合センター(2004)、沖縄KOKUEIKAN(2006)、駿府教会(2008)、宇都宮のハウス(2009)、直島宮浦ギャラリー(2013)、今治港再生事業(進行中)ほか。主な論文は、現代都市のための9か条(新建築2011年10月号、同2012年5月号)、木造進化論(西沢大良木造作品集2004-2010/inax出版)、立体とアクティビティ(西沢大良1994-2004/toto出版)ほか。主な受賞は、AR-AWARD最優秀賞(英国)、ART&FORM最優秀賞(米国)ほか。作品集は、西沢大良1994-2004(toto出版)、西沢大良2004-2010木造作品集(inax出版)。

 

●ひとことコメント
 東京の参加説明会に合わせた基調講演会では、昨年、ご登壇をいただきました長田先生や稲山先生など、多くの先生方のご推薦から、西沢先生にご登壇いただきました。
 講演では、「近代建築だけでなく現代建築をつくるには、人工物としてだけでなく自然物に、現実的にだけでなく魔術的に、少量多種でなく多種多量に」という言葉をいただき、それぞれの言葉の概要を説明された後、「現代建築のつくり方」と題してこの3つの言葉の意味をご自身の作品を事例に話されました。
 最後に、ご自身の学生時代を振り返り、ご指導いただいた篠原一男先生や、学生の頃に出会われた様々な先生方の写真をスライドで映し、大学生という人生のうちの貴重な数年で、人生を決定づけるような素晴らしい先生方から、どのようなことを学ばれ、先生方のどんな姿勢を見ていたのかということを詳しくお話していただきました。そして私たち比叡山延暦寺で開催する、建築学生ワークショップに参加する学生に向けて、「生身の人間に会わなければ得られない情報がある」という、深く貴重なメッセージをいただきました。
(アートアンドアーキテクトフェスタ/西村俊貴・東京大学大学院 修士2年、関春佳 ・千葉大学 2年)

京都会場
京都大学(吉田キャンパス)
百周年時計台記念館
国際交流ホールIII

文学部 第3講義室
京阪本線「出町柳駅」徒歩10分
京都市営バス「京大正門前」または「百万遍」下車 徒歩10分

5月19日(木)18:30-20:00(18:00開場)
入場無料|定員: 先着100名|要申込


基調講演 平田晃久 (建築家)
1971年大阪府に生まれる。1994年京都大学工学部建築学科卒業。1997年京都大学工学研究科修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務の後、2005年平田晃久建築設計事務所を設立。2015年より京都大学准教授就任。主な作品に「桝屋本店」(2006)、「Bloomberg Pavilion」(2011)、「Kotoriku」(2014)等。第19回JIA新人賞(2008)、Kaohsiung Maritime Cultural & Popular Music Center国際競技二等(2011)、Elita Design Award(2012)、第13回ベネチアビエンナーレ国際建築展金獅子賞(2012、日本館)、太田駅駅前文化交流施設プロポーザル最優秀賞(2014)、等受賞多数。著書に『現代建築家コンセプト・シリーズ8 平田晃久 建築とは<からまりしろ>をつくることである』(LIXIL出版)等。2016年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)にて"Japanese Constellation"展(2016)参加。

 

●ひとことコメント
 京都の参加説明会に合わせた基調講演会では、開催初年度の2010年、奈良・平城宮跡での取り組みから私たちと共に併走くださる腰原先生や、建築学生ワークショップのオーガナイザーを務められる平沼先生など多くの先生方のご推薦から、平田先生にご登壇いただきました。
講演では、「私が学生の頃に考えていたこと」というテーマを基に、当時、最も影響を受けた書籍を2冊紹介されながら、現在の設計活動にどのようにつながっているかを語られました。平田先生の学生の頃から現在まで考えられていた思想を、建築で実証されるまでの経緯と共にお話しをいただいた貴重な開催でしたが、最後に、私たち比叡山延暦寺で開催する、建築学生ワークショップに参加する学生に向けて、「個人のアイデアだけではなく、班の仲間で話し合い協力していくことで発見できるものがあること。そして図面上だけではわからない空間体験から得られる建築の面白さが解るだろう。」というメッセージから、学生らが参加する意義を唱え、大きな励みをくださいました。
(アートアンドアーキテクトフェスタ/原之園健作・大阪市立大学 3年、松原湧佑・京都建築大学校 4年、濱川はるか・京都美術工芸大学 3年)

対 談 | 聖地を受け継ぐ建築学生ワークショップ2017 国宝根本中堂「平成の大改修」始まりの年に

武円超 (比叡山延暦寺・管理部主事) × 平沼孝啓 (建築家)
NPO/AAF 松本ガートナー


武 円超氏(左) 平沼 孝啓氏(右)


対談の様子


根本中堂


対談の様子


対談の様子


恵心堂


阿弥陀堂


対談の様子

――― 全国の大学生が参加するこの建築学生ワークショップは、関西圏で開催地を変えながら開催していきます。特性をはっきりと持つ場所で開催することにより、建築や芸術、デザインを学ぶ若い世代が、歴史遺産とされる場所でしか体験できない貴重な経験を通じて、場所のコンテクストからの建築の解き方を深めていくきっかけをつくっていきたいと思っています。
 そして今年は、日本の仏教の中心に位置する比叡山という一種、特殊な場所の魅力にひかれて、開催地として希望をしました。この場所の特性を用いるため、大きく分けて「歴史」「場所性(地形)」「現代の問題」の観点から提案を求めるものを探っていきながら、ワークショップ開催の意義についてお伺いしたいと思います。
 本日は、来年の開催に際して多大なご尽力をくださいます、比叡山延暦寺の武先生、そして、この建築ワークショップのオーガナイザーとしての役割を担い続けてくださいます、建築家の平沼先生にお話しをお聞きしながら、今年の比叡山でのワークショップ開催についてお聞きします。

平沼:はじまりのご質問をする前に、比叡山延暦寺は、世界の平和や平安を祈る寺院として、さらには「学問」の修行の道場として、日本仏教各宗各派の祖師高僧を輩出された、「日本仏教の母山」と仰がれています。山内は 「東塔(とうどう)」「西塔(さいとう)」「横川(よかわ)」と呼ばれる3つの区域に分かれ、東塔は「現在」、西塔は「過去」、そして横川は「未来」空間を現し、そのご本尊をお参りすることで、根本に立ち返り、今、生かされていることに感謝をする「祈り」の場所とお聞きしてきました。まずは、この山が現代にまで続く聖地のような場所となり、現代にもたらした思想の背景にある、この地に暮らす人たちの生活背景はどのようなものでしょうか。

:今年は、伝教大師最澄上人が誕生されて1250年の年でした。最澄上人は比叡山の麓、坂本で生まれたことから、ご生誕の地「生源寺」を中心に、坂本にある学校や街も一緒になって、現在もお祭りや法要をしています。また平成24年から始まりました「祖師先徳鑽仰大法会」では、延暦寺には多くの高祖、祖師の方がおられますが、その方々の遠忌も含めて、平成33年の伝教大師1200年大遠忌をお迎えすることになっています。

平沼:「大法会」というような法要やお祭りを重ねることにより、山あっての街、街あっての山の関係をずっと築きあげているのですね。武さん、根本中堂・平成の大改修の時期は、大法会と重ねたということでしょうか。

:いえ、今回の大改修は、たまたま重なったといった方が良いかもしれません。多くのお堂もそうですが、大改修は基本的に60年くらいに1度。うちの根本中堂と知恩院御影堂、清水寺本堂などは、ほぼ同じ時期、徳川三代将軍家光公の時に建立しました。根本中堂は1642年に竣工で、現在までで370年ぐらいです。建立からの改修頻度は、60年だったり、70年だったりという期間の変化はありますが、大体60年ぐらいで、屋根がもたなくなってくるんですよ。平沼さんは、よくご存じだと思いますが、屋根が悪くなって雨漏りしたりすると、建物全体がものすごく痛んでしまう。創建当初は、根本中堂本堂も全部栩葺きになっていたのですが、江戸時代後期の改修の中で、銅板に変わってきました。銅板はハゼが切れてしまうので60年を目処にしています。知恩院さんも清水寺さんも保存修理をされていますが、これまでも同じような時期に改修しています。今回もほぼ同じ時期だったのですね。

平沼:銅板という素材全体が悪くなるわけじゃなくてハゼの部分。改修という再建を重ねることで、この技術の継承が蓄積され、建築を存在させているわけですね。そしてこの延暦寺は、世界平和を守る寺院として、学問の修行の場として、日本の母山と呼ばれている場所です。これまで1200年以上、思想という存在が継承され続けた理由は何でしょうか。

:延暦寺は皆さんが昨年開催された高野山と同じ時期に開かれているので、根底にあるものは同じようなことだと思うのですが、人を惹きつける何かがあると感じています。高野山は密教を中心とした真言の教えですし、うちは法華経を中心とした天台の教えです。天台の教えは、法華経が一番中心ですが、密教や座禅、戒律も重要な要素となっています。このように多くの教えがあるので、日本仏教の母山と言われています。浄土宗や浄土真宗、日蓮宗など、鎌倉新仏教といわれる、新しい宗派のお祖師さん。法然さんや親鸞さん、日蓮さんや栄西さんは、皆、比叡山で修行をされています。それぞれ比叡山で学んだ教えを持ち帰り、各地で深め広めていった。新しい宗派というのをつくり受け継がれていかれたのですね。
また比叡山は修行の山です。「修行」と言えば厳しそうですが、厳しいだけが修行ではありません。もちろん現在も続く、千日回峰行や浄土院の十二年籠山行、礼拝行や座禅、そういった目に見える行はもちろん「修行」といいますけど、今日、こうやって平沼さんとお話ししているのだって、お坊さんにとっては修行と言えます。天台宗の基本とされる修行は「四種三昧行」と言って4つあります。1つは「常坐三昧」という常に座っているだけの修行。座禅をするっていう修行方法。2つ目は「常行三昧」という、「南無阿弥陀仏」と阿弥陀さんの名前を唱えながら、仏さんの周りを歩く行。そして3つ目は「半行半坐三昧」という、半分ずつですね。座るのと、歩くのと、半分ずつ行っている行。これは基本的に形の決まった3つの修行なんですが、それ以外に「非行非坐三昧」というのがあります。座る事もしない、歩く事もしない行。それは日常生活なんです。形にとらわれない日常生活でも修行になりますよっていう事で、日ごろの行いをおろそかにしないようにという事を言われています。テレビでみるような「修行は滝に打たれて」という形あるものだけが修行ではないのです。私たち僧侶のやっていることは、一般の方々を、仏様の世界に導く橋渡しをすることです。もちろん私たちだって、悟りを開いて仏さんの世界に行ってみたいという気持ちはありますけど、一般の方々にこの仏様の教えを伝えて、それによって皆さんの心や気持ちを救いたいということが、1番の目的になります。私たちも1人で行をしていたらそれで良いのかというと、やっぱりそうではないですよね。人間1人ではやっぱり何も成し得ないものですよね。

平沼:来年、「建築ワークショップ」という取り組みを、この地で開催させていただく中で、参加する学生たちが、比叡山という山や坂本という街、場所のコンテクストを手掛かりに「延暦寺」での表現方法や提案を考えてきます。この学問を通じた修行の場所を現代まで繋いできた経緯を含めて、次の世代に繋いでいく時の「問題」は、今、何か抱えておられますか。

:たくさんありますが、まずはやはり日本人が、宗教というものから離れてきてしまっていることですね。観光としては山に来てもらえるけれど、天台宗の教えを広めるっていうところまではなかなか根づかない。もちろん来てもらうだけでも、その教えを知るひとつにはなるのですが、なかなか深まらないのが心配です。あと私たちみたいな僧侶の成り手です。やっぱりお坊さんが居ないとね、お寺を守っていけない。どこのお寺さんも同じような悩みだと思います。比叡山では昔、何千人という僧侶が修行していました。しかし明治時代になって「神仏分離」や「廃仏毀釈」があって、お寺の勢いは減ってしまいました。そして現代になって、いろいろな情報が人の周りに入ってくるようになって、仏教に興味を持つことも減ってしまったのではないのかと思います。比叡山でも「小僧さん」と呼ばれる若い人たちがお寺へ手伝いに来ていたのですが、現代はほとんどいないですね。

平沼:なるほど。もうひとつお聞かせください。比叡山は延暦寺さんが山の全ての管理をされてこられたと思うのですが、この美しい山の継承の歴史をお聞かせください。

:そうですね、私たちは現在1,600㌶以上の山林を保有しています。延暦寺の山林の範囲は滋賀県の琵琶湖からの見た比叡山のほぼすべてと、京都からは山頂付近のすこしの部分です。そしてこれまでの歴史は、古い記録に遡ると、江戸時代に「法度」という今でいう法律がありましたが、比叡山には山林に関する「法度」が出されています。例えば「ここの木々は伐採したらだめですよ」というものですね。比叡山は、織田信長による焼き討ちあり、その後江戸時代にかけて多くのお堂を建て直すのに、たくさんの木を使ったからだと思います。江戸時代にこのような法律が制定されて、山の木が守られるようになりましたが、明治に入ると先ほど話した「毀釈」というのがあって、延暦寺だけじゃなく日本全国のお寺もですが、境内地の大部分を国に没収されました。明治の初めに取られて、返還されたのが明治40年ごろ。山は約40年間放置されたままでしたので荒れていた。この荒廃した山を、比叡山にとって一番いい状態を目指し相談をはじめたのが、東京大学におられた林学博士の右田半四郎先生です。右田先生と比叡山の山林の施業計画をつくり、杉や檜を植え整備をしていきました。山の管理や維持を続けていくため、山林を守り整備を行い、木材を売却して収入を得るやり方です。そのため、現在の比叡山は、ほぼ人工林です。以前は山林収入が延暦寺の大きな収入のひとつでしたが、近年では木の価格が最盛期の1/10以下となり、山の整備を行っていくのには採算が合わないのが実情ですが、比叡山を守っていく上で、山林の整備は続けていかないといけません。

平沼:この山に学生らが入り、何か小さくても問題提議となるきっかけだったり、この場所を表現する建築をつくるんだ、という使命を持って参加します。どういうことを手掛かりにして、空間を表現していけばいいのかという読み解き方や、こういう所に着目していけばいいんじゃないか、というアドバイスをくださらないですか。

:私たちが、山林を保有し、守っていく上で一番大切にしているのは、「どこの、どれだけの木を倒したらいいのか」を、「修行の山」であることを念頭に置き、山の麓やどこから見ても「修行の山」であると分かるように、延暦寺としてふさわしい山づくりを行う。それは文化財を守っていくことにもつながると思います。
私たちは、山の本体はお大師さん。山に生えている木々は、お大師さんの衣である。と言っています。伝教大師さんの衣が破れていたら繕わないといけないので、伝教大師さんの衣が破れてないようにしなさいよ。と、そういう思いで山を管理しなさいと言われ続けています。恐らく、比叡山を訪れたことのない参加学生たちもいると思います。延暦寺にただ「お寺」という漠然としたイメージで来ると、自分の中の想像と大きく違うと思います。何か特別のイメージを持ってくるのではなくて、来てもらってから感じ、想い、考えてもらうのがいいと思います。

平沼:多くのプロセスをお聞かせくださったおかげで、制作のアイディアを探るきっかけになりました。最後になりますが、この比叡山という、場所の特徴をお聞かせください。

:比叡山は、京都の都と大きな関係があります。学生の皆さんもよく知る歴史ですが、794年 京都に平安京が移ってきました。この京都(御所)から見て「鬼門」の方向に比叡山があります。多くの建築を設計されておられるので、もちろん平沼さんは鬼門のことをよくご存知だと思います。今日の対談の設定をご準備され、AAFという法人の運営を担当し、建築学生ワークショップ比叡山の実現を担われている、海外で育たれた松本ガートナーさんや、参加される現代の学生さんに向けて少し話します。
「鬼」の姿は、虎柄のパンツを履いて牛の角が生えています。十二支で話すと、子、丑、寅、卯…と続くのですが、方位で示すと、子が北で、卯が東。この間に、丑寅があり、これが東北の方位を表し、東北の方向からは鬼のように良くないものが入ってくると言われています。京都から鬼門の方向見ると、比叡山があったのですね。当時の桓武天皇が京都に都を移した時、比叡山にお坊さんがいると聞いて、その最澄さんに「都を護ってほしい。」と頼まれました。そのため、現在も続く、延暦寺・根本中堂で毎日行うお勤めは、難しい言葉で「鎮護国家」といい、国を護るための祈願を行っています。現代では、ここ比叡山で仏教だけでなく、キリスト教やイスラム教など、さまざまな世界の宗教の代表者が集まる「比叡山宗教サミット」が毎年開催され、世界平和の祈りの集いの場所となっています。

平沼:今、お話しくださった歴史とか場所性とか、ここに根付く系譜に基づいた提案を、参加する学生たちにして欲しいと思うのと、根本中堂を中心とした区域を、お預かりさせていただくので、フォリーがメインじゃなくて、訪れた人たちを中心として、心を落ち着かせて祈りを捧げることができるような、そういう空間を求めていきたいと思います。本日は、ありがとうございました。

:こちらこそ、ありがとうございました。
来年の夏。このサマーワークショップで創られる、空間体験を楽しみにしています。

――― たいへん貴重なお話しが聞けて、本日はどうもありがとうございました。この対談を通じて、このワークショップが参加学生にとって、とても貴重で意義深いものになるような気がしています。そして将来、この場所で開催した意義につながっていくような、提案作品を募りたいと思います。

(平成28年12月22日 比叡山延暦寺 延暦寺会館にて)


聞き手: 松本ガートナー祥子
(AAF│建築学生ワークショップ法人運営マネージャー)
編集後記
「日本の建築」が世界に誇れる存在である理由は、比叡山延暦寺様のような長い時間に築かれた日本の精神性に関係が深いことをあらためて知る機会となりました。先祖の教えを敬い、自然を愛し、和をもって貴しとした、私たちがもつ大切な日本人の精神性だと感じています。
一般社会にも投げかけていけるようにと2010年より、地元の方たちと共同開催での参加型の取り組みになっていくことを目指し、平城遷都1300年祭の事業として、考古遺跡としては日本初の世界文化遺産、「平城宮跡(奈良)」での開催にはじまりました。続く2011年度は滋賀・琵琶湖に浮かぶ「神の棲む島」と称される名勝史跡、「竹生島(滋賀)」にて、宝厳寺と都久夫須麻神社と共に、無人島である聖地に、地元周辺の方たちと汽船で通う貴重な開催ができました。そして2015年、真言宗総本山の世界遺産 「高野山(和歌山)」では、開創法会1200年となる100年に1度の年に、金剛峯寺様との取り組みから、境内をはじめとした聖地で開催し、猛烈な暑さの中での開催となりました2016年の夏のワークショップは、日本の故郷とも称されるこの原初の聖地、「明日香村(奈良)」において開催を無事に終えることができました。ファイバースコープによって北壁の玄武図が発見されてから30年を経て、一般公開される直前のキトラ古墳と国営飛鳥歴史公園の開園プレ事業としての位置づけで、貴重なキトラ古墳の麓に小さな建築を実現されたことは、今後、建築をつくる生涯においても稀で、なかなか得難い大変貴重な経験となり、必ずや参加をした学生の皆さんの記憶に残る取り組みになったことでしょう。そして今年は、この聖地、比叡山延暦寺。日本を代表する建築家や構造家、全国の大学で教鞭を執られる先生方の厳しくも愛のある指導を受けることも、生涯の記憶に残るような幸運であったと、想い返すことになる貴重な機会となるでしょう。この大切な記憶がまたひとつ増えるような取り組みです。




【スケジュール】  
1月1日(日) 参加者募集開始
5月11日(木)予定 参加説明会開催(東京大学) 西沢大良
5月18日(木)予定 参加説明会開催(京都大学) 平田晃久
5月31日(水)23:59必着 参加者募集締切(参加者決定)
6月24(土) 現地説明会・調査
7月22日(土)~ 23日(日) 提案作品講評会(1泊2日)
   22日(土)   提案作品講評会
   23日(日)   実施制作打合せ
7月24日(月)~ 8月21日(月) 各班・提案作品の制作
8月 22日(火)~ 8月28日(月) 合宿にて原寸制作ファイナル(6泊7日)
   22日(火)   現地集合・資材搬入・制作段取り
   23日(水)~ 26日(土)   原寸模型制作(実質4日間)
   27日(日)   公開プレゼンテーション
   28日(月)   清掃・解散
 

【開催の経緯】
 建築ワークショップとは、建築や環境デザイン等の分野 を専攻する学生がキャンパスを離れ、国内外にて活躍中の建築家を中心とした講師陣の指導のもと、その場所における社会的な実作品をつくりあげることを目的としています。2001年度から始まったこのワークショップは過去に山添村(奈良県)・天川村(奈良県)・丹後半島(京都府)・沖島(滋賀県)などの関西近郊の各地で行われ、それぞれの過疎化した地域を対象に提案を行い、市や村の支援を得ながら、有意義な成果を残してきました。

 第10回目の開催となった2010年度より、新たに今までの取り組み方とは志向を変え、一般社会にも投げかけてゆけるようなイベント型の催しになっていくことを目指し、「平城遷都1300年祭」の事業として、世界文化遺産(考古遺跡としては日本初)にも指定されている奈良・平城宮跡で開催しました。
 続く、2011年度は滋賀・琵琶湖にうかぶ竹生島(名勝史跡)にて開催。このような特殊な環境において、地元の建築士、工務店の方々に工法を教えていただきながら、原寸の空間体験ができる小さな建築物の実制作を行い、地域協力のもと、船上にて一般市民を招いた公開プレゼンテーションを行う等、これまでにない新たな試みを実施しました。
 2015年度は、開創1200年を迎えた和歌山県・高野山。1,000メートル級の山々に囲われた聖地で、全国から集まり、歴史や場所の特性を知るため、現地・高野山にてフィールドワークから実施しました。異なるバックグラウンドを持つ学生同士が様々な視点からの論議を行い、案をまとめ、原寸大のスケールで体験できる作品を制作しました。
 8月30日の最終日には、高野山金剛峯寺の協力のもと大師教会大講堂での一般市民や地域住民に向けた公開プレゼンテーションにて、その成果を発表しました。
 2016年度は、飛鳥時代の宮殿や史跡が多く発掘されている事で知られ、「日本の心の故郷」とも紹介される明日香村で作品制作を行い、9月4日には制作した8つの作品を展示し、国土交通省の協力のもと四神の館での一般市民や地域住民に向けた公開プレゼンテーションにて、その成果を発表しました。

 

【開催目的】
1.学生のための発表の場をつくる
 学内での研究活動が主体となっている学生にとって、一般市民に開かれた公開プレゼンテーションを行うこと自体が非常に貴重な体験となります。また、現在建築界で活躍する建築家を多数ゲスト講師に迎えることで、質の高い講評を参加者は受けることができます。また、ワークショップ終了後の会場での展示や、会期報告としてホームページや冊子の作成を行い、ワークショップの効果がさらに継続されるような仕組みをつくります。
2.教育・研究活動の新たなモデルケースをつくる
 海外での教育経験のある講師を招聘する等、国際的な観点から建築や環境に対する教育活動を行うワークショップとして、国内では他に類を見ない貴重な教育の場を設けます。また、行政や教育機関の連携事業として開催することで、国内外から注目される教育・研究活動として、質の高いワークショップをつくることを目指します。
3.地球環境に対する若い世代の意識を育む
 現在、関西地方には、世界に誇る貴重な文化遺産を有する京都や奈良、琵琶湖や紀伊半島の雄大な自然など、豊かな環境が数多く残っています。しかしながら、近年の社会経済活動は環境への負荷を増大させ、歴史的に価値の高い環境をも脅かすまでに至っています。このワークショップでは一人一人が地域環境の特殊性、有限性を深く認識し、今後の建築設計活動において環境への配慮を高めていくと同時に、地球環境の保全に貢献していくことをねらいとしています。次世代を担う学生たちが、具体的な経験を通して環境に対する意識を育むことは、環境と建築が共存できる未来へと、着実につながるのではないかと考えます。 4.地域との継続的な交流をはかる
 歴史、文化、自然が一体となって残る地域の特色を生かしたプログラムを主軸に、特殊な地域環境や、住民との交流によって生み出される制作体験を目的としています。各地域には、それぞれの土地で積み重ねてきた歴史や文化、風土があり、短期間のイベントであればそれらを深く知ることはできませんが、数ヶ月にわたる継続的な活動を前提として取り組むことで、より具体的な提案や制作によって、地域に還元していくことができると考えています。

"今、この場所から"  日本仏教の代表的な聖地において


 その場所のもつ歴史や意味、地形や風の流れといった文脈を読むことを始点として建築はつくられていきます。ですから、建築にとって「場」を読み解くことは始まりであり、最も重要なことといえます。これを学ぶことは建築の道を歩み始めた学生にとって大切であり、実地でなければ学び得ないことだと考えています。

 比叡山1200年の歴史の中で培われてきた人間のちから。その霊場のもつ自然のちから。これらを、その場に身を置き、天台宗の教えにふれながら読み解いていく。その過程で他校の生徒はもちろん、地域の方々や参拝の方々の様々な考えにふれながら読み解いていく。普段、学内の似通った価値観の中で学んでいる学生にとって、大変貴重な経験になります。

 比叡山延暦寺は、世界の平和や平安を祈る寺院として、さらには学問と修行の道場として、日本仏教各宗各派の祖師高僧を輩出し、日本仏教の母山と仰がれています。

 山内は 「東塔(とうどう)」「西塔(さいとう)」「横川(よかわ)」と呼ばれる3つの区域に分かれており、東塔は現在、西塔は過去、そして横川は未来空間を現し、そのご本尊をお参りすることで、根本に立ち返り、今、生かされていることに感謝をする祈りの場所となっています。

 日本仏教の中心である比叡山に、全国で建築を学ぶ大学生が集まり、過去1200年に渡って受け継がれてきた歴史を、現代の問題とともに未来へとつなげていくために、「今、この場所から」伝えていくべきことを、それぞれが真剣に考え、原寸大の空間として表現します。延暦寺発祥の地であり、本堂にあたる根本中堂を中心とする区域において、作品を展示することで、訪れた人が中に入り、心を落ち着かせ、祈りを捧げることができる、小さな建築空間を創出します。

 将来を担う学生たちが今という時代に向き合い、この場所でできることに全力で取り組むことで、「今、この場所から」世界に向けたメッセージを発信していきます。学生たちはきっと、その若い感性によって新たな発見をし、未来を創造する提案をしてくれることでしょう。

【建築学生ワークショップとは】

 建築ワークショップとは、建築や環境デザイン等の分野を専攻する学生がキャンパスを離れ、国内外にて活躍中の建築家を中心とした講師陣の指導のもと、その場所における場所性に根づいた実作品をつくりあげることを目的としてきました。2001年度から始まったこのワークショップは過去に山添村(奈良県)・天川村(奈良県)・丹後半島(京都府)・沖島(滋賀県)などの関西近郊の各地で行われ、それぞれの過疎化した地域を対象に提案し、市や街、村の支援を得ながら、有意義な成果を残してきました。

  第10回目の開催となった2010年度より、新たに今までの取り組み方の志向を変え、一般社会にも投げかけてゆけるような地元の方たちと共同開催での参加型の取り組みとなっていくことを目指し、「平城遷都1300年祭」の事業として、世界文化遺産(考古遺跡としては日本初)にも指定されている奈良・平城宮跡で開催しました。続く2011年度は滋賀・琵琶湖に浮かぶ「神の棲む島」竹生島(名勝史跡)にて、宝厳寺と都久夫須麻神社と共に開催。無人島とされている聖地に、地元周辺の方たちと汽船で通う取り組みを行いました。

 そして一昨年は、開創法会1200年となる100年に1度の年に、高野山・金剛峯寺(世界文化遺産)との取り組みから、境内をはじめ周辺地区での開催をしました。そして昨年は、昭和58年11月7日に聖地・キトラ古墳で、ファイバースコープによって北壁の玄武図が発見されてから30年を経て、公開される直前のキトラ古墳と国営飛鳥歴史公園の開演プレイベントとして、キトラ古墳の麓に小さな建築を8体実現しました。

 このような日本における貴重で特殊な聖地における環境において、地元の建築士や施工者、大工や技師、職人の方々に古典的な工法を伝えていただきながら、日本を代表する建築エンジニアリング企業・日本を代表する組織設計事務所の方々や多くの施工会社の皆様、そして建築エンジニアリング企業の方たちによる技術者合宿指導により実制作を行い、地元・地域の多くの方たちによる協力のもと、原寸の空間体験ができる小さな建築物の実現と、一般者を招いた公開プレゼンテーションを行う等、これまでにない新たな試みを実施してきた、全国の大学生を中心とした合宿による地域滞在型の建築ワークショップです。

 
2016年度開催の様子(こちら → )
 



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