全国の大学生たちが小さな建築を、大阪関西万博・会場内に10体実現。


参加募集パンフレット
(座談会)
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 2018年11月23日(日本時間同24日未明)に2025年国際博覧会が大阪に決定されました。開催地は大阪市の最西端に位置する此花区の人工島・夢洲に、日本古来の伝統木造技術で建設される大屋根(リング)を中心に、最先端の建築の博覧会を目指され、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに同年4月13日~10月13日迄の半年の期間開催されます。世界各地から多くの人たちが訪れる日本国際博覧会開催の期間に、大阪・関西のこれからの聖地ベイエリアに滞在して小さな建築の実現をいたします。将来を担う学生たちが今という時代に向き合い、この場所でできることに全力で取り組む。新たに建築空間の力を備えて「実際につくる」という取り組みは、大変貴重な試みです。学生たちはきっと、その若い感性によって新たな発見をし、未来を創造する提案をしてくれることでしょう。



【参加予定講評者】

万博会場のプロデューサーと共に、日本の文化を世界へ率いる方々を中心として、建築・美術 両分野を代表する評論家をはじめ、第一線で活躍をされている建築家や都市計画家、コミュニティデザイナー、構造研究を担い教鞭を執られているストラクチャー・エンジニアによる講評。また近畿二府四県の大学で教鞭を執られ、日本を代表されるプロフェッサー・アーキテクトの皆さまにご参加いただきます。




【スケジュール】  
2022年
07月01日(金)
10月08日(土)

事業計画(草案)決定
座談会の開催
2024年
09月16日(月)

参加者募集開始(WEB公開)
2025年
01月04日(土)

プレスリリース配信
04月15日(火) アドバイザー会議
05月08日(木) 参加説明会開催(東京大学) 藤本壮介
05月15日(木) 参加説明会開催(京都大学) 石川勝
05月16日(金)23:59必着 参加者募集締切
06月07日(土) 現地説明会・調査
06月28日(土)午後予定 各班エスキース(東京会場・大阪会場)
07月20日(日)~ 21日(月・祝) 提案作品講評会(1泊2日)
      20日(日)   提案作品講評会
      21日(月・祝)   実施制作打合せ
07月22日(火)~09月08日(月) 各班・提案作品の制作
09月09日(火)~15日(月) 合宿にて原寸制作ファイナル(6泊7日)
     09日(火)   現地集合・資材搬入・制作段取り
     10日(水)~ 13日(土)   原寸模型制作(実質4日間)
     14日(日)   公開プレゼンテーション
     15日(月)   清掃・解散
 

【開催の経緯】

 建築ワークショップは、建築や環境デザイン等の分野を専攻する学生がキャンパスを離れ、国内外にて活躍中の建築家を中心とした講師陣の指導のもと、その場所における場所性に根づいた実作品をつくりあげることを目的としてきました。2001年度から始まったこのワークショップは過去に山添村(奈良県)・天川村(奈良県)・丹後半島(京都府)・沖島(滋賀県)などの関西近郊の各地で行われ、それぞれの過疎化した地域を対象に提案し、市や街、村の支援を得ながら、有意義な成果を残してきました。

 第10回目の開催となった2010年度より、新たに今までの取り組み方の志向を変え、一般社会にも投げかけてゆけるような地元の方たちと共同開催での参加型の取り組みとなっていくことを目指し、「平城遷都1300年祭」の事業として、世界文化遺産(考古遺跡としては日本初)にも指定されている奈良・平城宮跡で開催しました。続く2011年度は滋賀・琵琶湖に浮かぶ「神の棲む島」竹生島(名勝史跡)にて、宝厳寺と都久夫須麻神社と共に開催。無人島とされている聖地に、地元周辺の方たちと汽船で通う取り組みを行いました。

 2015年は、開創法会1200年となる100年に1度の年に、高野山・金剛峯寺(世界文化遺産)との取り組みから、境内をはじめ周辺地区での開催をし、2016年には、昭和58年11月7日に聖地・キトラ古墳で、ファイバースコープによって北壁の玄武図が発見されてから30年を経て、公開される直前のキトラ古墳と国営飛鳥歴史公園の開演プレイベントとして、キトラ古墳の麓に小さな建築を8体実現。2017年には、国宝根本中堂「平成の大改修」始まりの年に、「古都京都の文化財」の一環としてユネスコの世界遺産に登録された、京都市と大津市にまたがる天台宗総本山・比叡山延暦寺にて開催。そして2018年には、天皇陛下生前退位をされる前年、満了する平成最後の夏に、伊勢にて開催。2019年は、「平成の大遷宮」完遂の年に、出雲大社にて開催。2020年には、国内初のプリツカー賞受賞式の聖地に於いて、東大寺にて開催いたしました。2021年は、鎮座百年を迎えた明治神宮にて開催(新型コロナ感染拡大の影響で合宿期間を2022年3月に延期)。2022年は、大鳥居・令和の大改修の年に、嚴島神社にて開催し、2023年は、弘法大師(空海)生誕1250年の年に、京都・仁和寺、2024年は開山より1150年の年に、京都・醍醐寺にて開催しました。

 

【開催目的】
1.学生のための発表の場をつくる
 学内での研究活動が主体となっている学生にとって、一般市民に開かれた公開プレゼンテーションを行うこと自体が非常に貴重な体験となります。また現在建築界で活躍する建築家を多数ゲスト講師に迎えることで、質の高い講評を受けることができます。ワークショップ終了後には、会場での展示の様子を、会期報告としてホームページ掲載や冊子の作成を行い、ワークショップの効果が継続されるような仕組みをつくります。
2.教育・研究活動の新たなモデルケースをつくる
 海外での教育経験のある講師を招聘する等、国際的な観点から建築や環境に対する教育活動を行うワークショップとして、国内では他に類を見ない貴重な教育の場を設けます。また、行政や教育機関の連携事業として開催することで、国内外から注目される教育・研究活動として、質の高いワークショップをつくることを目指します。
3.地球環境に対する若い世代の意識を育む
 現在、日本の各地方には、世界に誇る貴重な文化遺産を有する雄大な自然など、豊かな環境が数多く残っています。しかしながら、近年の社会経済活動は環境への負荷を増大させ、歴史的に価値の高い環境をも脅かすまでに至っています。このワークショップでは一人一人がこうした地域環境の特殊性、有限性を深く認識し、今後の建築活動において環境への配慮を高めていくと同時に、地球環境の保全に貢献する人材を育てていくことをねらいとしています。次世代を担う学生たちが、具体的な経験を通して環境に対する意識を育むことは、環境と建築が共存できる未来へと、着実につながるものと考えます。 4.地域との継続的な交流をはかる
 歴史、文化、自然が一体となって残る地域の特色を生かしたプログラムを主軸に、特殊な地域環境や、住民との交流によって生み出される制作体験を目的としています。各地域にはそれぞれの土地で積み重ねてきた独自の歴史や文化、風土があり、自然素材を上手く活用してきた歴史があります。短期間のイベントであればそれらを深く知ることはできませんが、数ヶ月にわたる継続的な活動を前提として取り組むことで、より具体的な提案や制作によって、地域に還元していくことができると考えています。

“1970~2025建築の博覧会~新たな聖地へ”  50年後の未来開催のために建築ができること


 その場所のもつ歴史や意味、地形や風の流れといった文脈を読むことを始点として建築はつくられていきます。建築にとって「場」を読み解くことは始まりであり最も重要なことです。これを万博開催地で学ぶことは建築の道を歩み始めた学生にとって貴重な体験となり実学を通じて技術を継いでいくことでしょう。

 2018年11月23日(日本時間同24日未明)に2025年国際博覧会が大阪に決定されました。開催地は大阪市の最西端に位置する此花区の人工島・夢洲に、日本古来の伝統木造技術で建設される大屋根(リング)を中心として最先端の建築の博覧会を目指し、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに同年4月13日~10月13日迄の半年間開催されます。

世界各地から多くの人たちが訪れる日本国際博覧会開催期間中に、次の時代の建築技術を担う学生らが大阪・関西のこれからの聖地・ベイエリアに滞在して小さな建築の実現をいたします。世界各国を代表する建築家らが仮設パビリオンを設計し、「建築の博覧会」とも称される最先端の建築群の場に身を置き、パリで始まった国際博覧会が現代にも残す貴重な環境で、全国から集まる建築学生らが最新の技術や構法に触れ、この場に位置づけた建築の解釈を生み出す貴重な経験となるよう「大阪・関西」に関わる人々と共に、取り組む機会としたいのです。

公募によって集まる日本全国で建築を中心としたものづくりを学ぶ専門学生、大学生、院生らが約1週間滞在し、長い歴史に受け継がれてきた学問の精神と技術を未来へとつなげていくために「1970~2025建築の博覧会~新たな聖地へ」伝えていくべきことをそれぞれが真剣に考え、原寸大の建築空間を表現します。会場内の中心となるリング周辺区域に大学生たちの作品を展示することで、訪れた人が中に入り、心を落ち着かせ、未来と対話することができるような、小さな建築空間を1日だけ創出します。

 将来を担う学生たちが今という時代に向き合い、この場所でできることに全力で取り組み、近現代における主要都市のまちづくりの縮図のような、大阪・夢洲という時限的で貴重な博覧会全体を会場で学び、世界各地から多くの方々が訪れるこの地で、開催中に体験できる実学空間を発信していきます。学生たちはきっと、その若い感性によって新たな発見をし、日本のナショナリティを未来へ継ぐ創造を提案をしてくれることでしょう。

【建築学生ワークショップとは】

 建築ワークショップとは、建築や環境デザイン等の分野を専攻する学生がキャンパスを離れ、国内外にて活躍中の建築家を中心とした講師陣の指導のもと、その場所における場所性に根づいた実作品をつくりあげることを目的としてきました。2001年度から始まったこのワークショップは過去に山添村(奈良県)・天川村(奈良県)・丹後半島(京都府)・沖島(滋賀県)などの関西近郊の各地で行われ、それぞれの過疎化した地域を対象に提案し、市や街、村の支援を得ながら、有意義な成果を残してきました。

 第10回目の開催となった2010年度より、新たに今までの取り組み方の志向を変え、一般社会にも投げかけてゆけるような地元の方たちと共同開催での参加型の取り組みとなっていくことを目指し、「平城遷都1300年祭」の事業として、世界文化遺産(考古遺跡としては日本初)にも指定されている奈良・平城宮跡で開催しました。続く2011年度は滋賀・琵琶湖に浮かぶ「神の棲む島」竹生島(名勝史跡)にて、宝厳寺と都久夫須麻神社と共に開催。無人島とされている聖地に、地元周辺の方たちと汽船で通う取り組みを行いました。

 2015年は、開創法会1200年となる100年に1度の年に、高野山・金剛峯寺(世界文化遺産)との取り組みから、境内をはじめ周辺地区での開催をし、2016年には、昭和58年11月7日に聖地・キトラ古墳で、ファイバースコープによって北壁の玄武図が発見されてから30年を経て、公開される直前のキトラ古墳と国営飛鳥歴史公園の開演プレイベントとして、キトラ古墳の麓に小さな建築を8体実現。2017年には、国宝根本中堂「平成の大改修」始まりの年に、「古都京都の文化財」の一環としてユネスコの世界遺産に登録された、京都市と大津市にまたがる天台宗総本山・比叡山延暦寺にて開催。2018年は、天皇陛下生前退位をされる前年、満了する平成最後の夏に、伊勢にて開催。 2019年は、「平成の大遷宮」完遂の年に、出雲にて開催。そして2020年、世界中が影響を受けた情勢により、開催が危ぶまれましたが、約1300年、疫病の復興を願われて建立された盧舎那仏(大仏様)のお背中で、学問の原初の聖地、東大寺にて開催を果たし、2021年は、鎮座百年を迎えた明治神宮にて開催(新型コロナ感染拡大の影響で合宿期間を2022年3月に延期)。2022年は、大鳥居・令和の大改修の年に、嚴島神社にて開催し、2023年は、弘法大師(空海)生誕1250年の年に、京都・仁和寺、2024年は開山より1150年の年に、京都・醍醐寺にて開催しました。

 このような日本における貴重でかけがえのない聖地における環境において、地元の建築士や施工者、大工や技師、職人の方々に古典的な工法を伝えていただきながら、日本を代表する建築エンジニアリング企業・日本を代表する組織設計事務所の方々や多くの施工会社の皆様、そして建築エンジニアリング企業の方たちによる技術者合宿指導により実制作を行い、地元・地域の多くの方たちによる協力のもと、原寸の空間体験ができる小さな建築物の実現と、一般者を招いた公開プレゼンテーションを行う等、これまでにない新たな試みを実施する『全国の大学生を中心とした合宿による地域滞在型の建築ワークショップ』です。

 
2024年度開催の様子(こちら → )
 




6/7(土) 現地説明会・調査

 現地にて、各計画候補地の視察と調査を行い、課題テーマに対するコンセプトを発表しました。
 はじめに主催者より、開催概要、経緯、開催地の説明を行い、開催テーマを発表しました。建築家藤本壮介先生にミニレクチャーをいただきました後、実際に会場内をご案内いただき、各計画地のコンテクストの読み解き方についてご教授いただきました。その後、各班の計画地を決定しました。55年ぶりの万国博覧会会場という場で、何を表現し、伝えたいのか、そのための手法や方法を検討し、具体的な提案まで構想を進め、後半は藤本先生に加え、腰原先生、櫻井会長、佐藤先生、平沼先生をはじめとする構造家、建築家の皆様より、コンセプトワークをご指導いただきました。

集合写真
 
日本国際博覧会協会副事務総長・田中様によるミニレクチュア
  京都信用金庫理事長・榊田様よりテーマのご説明
 
藤本先生によるミニレクチュア
  藤本先生による計画地(会場内)ご案内
 
現地説明会の様子
  各班のコンセプトメイキングの様子
 
各班のコンセプトメイキングの様子
  各班で決定したコンセプトの発表


【開催記念 説明会・講演会】
ワークショップの参加募集の説明会と、開催を記念して活躍中のプランナーと建築家にレクチュアを行っていただきました。

東京会場 
東京大学(弥生キャンパス)

農学部
弥生講堂アネックス

東京メトロ南北線「東大前駅」徒歩3分
東京メトロ丸の内線・大江戸線「本郷三丁目駅」徒歩10分

5月8日(木)17:30-19:00(17:00開場)
入場無料|定員: 先着100名|要申込


基調講演 石川勝(大阪・関西万博会場運営プロデューサー)
1963年札幌市生まれ。プランナー として博覧会や展示会を数多く手掛ける。2005年愛知万博ではチーフプロデューサー補佐として基本計画、ロボットプロジェクト、極小IC入場券等をプロデュース。ロボット技術、コンテンツ技術に専門性を持ち、2006年から10年間、東京大学IRT研究機構で産学連携事業に従事。経済産業省「今年のロボット大賞」事務局長、 「技術戦略マップ(コンテンツ分野)」 委員等を歴任。

 

●ひとことコメント 
ご講演では、商業デザイナーからプランナーへの道を歩み始めることになった際、事業企画を1000本以上手掛ける経験を積まれたというお話をしてくださった。これまで経験したことのなかった川上の領域を学び、アイデアの原点を生み出す仕事の面白さに目覚め、文字一つ一つに想いを込め、人の心を動かす言葉を選び抜く経験の中で、言葉が持つ力の深さや難しさを叩き込まれたという。「企画書は、人の心を動かすためのラブレターである」。石川先生のこのお言葉は、聴講した私たちの心に響いた。様々なものがデジタル化された時代に生まれた私たちは、便利さや効率化を求めるあまり、多くの手間や試行錯誤の中にある学びや好奇心というものを見失っているのかもしれない。一見、手間に思える作業や非効率に見える工程は、実は自分自身と向き合い、考える力を育む機会となる。便利な時代だからこそ、一つ一つのプロセスに真摯に向き合い、自分の手で創り出す経験を積み重ねていく必要があると感じた。そして建築学生ワークショップに取り組む上で最も重要なこととして、コンセプトやテーマと建築形態とが乖離しないこと、また言葉と形態が有機的に結びついているかが人の心を動かす鍵となるため言葉の力の重要性について考えて欲しいと、メッセージをいただいた。日本国際博覧会(大阪・関西万博)会場でなければ表現することができない、未来のための建築を実現してほしい。仮想空間で様々なことが体験できる現代だからこそ、実体験として本開催に取り組む経験は、今後の人生において、何にも代え難い価値となるだろう。

アートアンドアーキテクトフェスタ/杉田美咲(大阪公立大学大学院 修士2年) 堀之内太視(武蔵野大学 修士1年) 松岡智大

京都会場
京都大学(吉田キャンパス)
百周年時計台記念館
国際交流ホールIII

文学部 第3講義室
京阪本線「出町柳駅」徒歩10分
京都市営バス「京大正門前」または「百万遍」下車 徒歩10分

5月15日(木)18:30-20:00(18:00開場)
入場無料|定員: 先着100名|要申込


基調講演 藤本壮介(建築家)
1970 年愛知県生まれ。00 年佐藤淳構造設計事務所設立。東京大学准教授(AGC 寄付講座)。作品に「共愛学園前橋国際大学4号館 KYOAI COMMONS」「プロソリサーチセンター」「武蔵野美術大学美術館・図書館」「地域資源活用総合交流促進施設」 「ヴェネチアビエンナーレ2008」。著書に「佐藤淳構造設計事務所のアイテム」。建築家との協働で、数々の現代建築を新たな設計理念によって実現させてきた。

 

●ひとことコメント 
今年の建築学生ワークショップは、これまで開催を重ねてきた歴史ある日本の聖地での開催ではなく、大阪の未来の聖地となる大阪・関西万博での開催である。大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーの藤本壮介先生にご登壇いただけるとあって、このワークショップ参加を希望する熱意ある学生たちに加え、万博に興味を注ぐ方が多数来場されていた。建築のデザインとは基本的には人が集まる場をつくるものであるが、今回、万博のフォーマットそのものの価値をしっかり発信すべきであること。そして万博の会場デザインを考えるにあたって、建築における最大級のスケールの課題に挑むことであり、世界そのものが集まる場をつくるプロジェクトだ、と捉え引き受けられた。当時は引き受けることで、建築家人生どころか人生も奪われるリスクを背負う可能性まで考えられたそうだが、検討し、覚悟した上で、このプロジェクトを通じて素晴らしい空間を創り上げることが、社会や世界に対する貢献になると確信し、誠意と誠実さをもって取り組まれたという。多様性が繋がる場をつくり発信していくこと。社会の要求の中に閉じてしまうのではなく自ら世界を切り開く藤本先生の強さと熱意を感じた。ここに参加することができる学生には、困難に対して妥協するのではなく、このワークショップで何を表現したいのか、自分の信念を貫く姿勢を示し完成させること。さらに実際に人がその場を使っている様子を見ることや、場に引き寄せられる体験をつくりだすことに必死になり、小さくてもリングに引けを取らないほど強いメッセージ性を持った建築をつくり上げてほしい。

アートアンドアーキテクトフェスタ/上山澄空(近畿大学3年) 杉田美咲(大阪公立大学大学院 修士2年) 阪上ちひろ(大阪公立大学3年)


4/4(火) アドバイザー会議

全国から応募し選出される参加学生の決定に先立ち、建築や芸術、環境やデザインを学ぶ学生(学部生・院生)らの提案・制作の指導・補助、材料提供・手配、実施におけるアドバイザー(建築技術者)の皆様に実施の交流を促すため2021年度より設けましたこの集まりは、 近い将来、我が国の建築会を担う後進に向けて、実務経験豊富な建築技術者の皆様から指導を頂戴できる、貴重な機会を共有する目的。本開催に継続的なご支援をくださる皆様や近畿を中心とする建築技術者の皆様、開催全体のスケジュールと共有し、提案作品講評会(本年:7/20日曜日)と、翌日実施制作打ち合わせ(本年:7/21月曜日)に向けて、本年の開催が始動いたしました。

関係者・講評者・アドバイザーの皆様

 
2025日本国際博覧会協会副事務総長・髙科様よりご挨拶   アドバイザー会議の様子
 
忽那先生による計画候補地のご案内
  忽那先生による計画候補地のご案内
 
忽那先生による計画候補地のご案内   忽那先生による計画候補地のご案内
 
忽那先生による計画候補地のご案内   懇親会の様子

座 談 会 | ”1970から2025へ” ~未来に受け継ぐために建築ができること  
建築学生ワークショップ日本国際博覧会2025

髙科淳(公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 副事務総長)
× 藤本壮介 (建築家│藤本壮介建築設計事務所 主宰)× 石川勝 (プランナー│シンク・コミュニケーションズ 代表取締役)
× 平沼孝啓 (建築家│平沼孝啓建築研究所 主宰)


座談会の様子 (大阪府咲洲庁舎 2025年日本国際博覧会協会 にて)





会場全体


静けさの森


大屋根(リング)


「シャインハット」大催事場


「レイガーデン」小催事場


大阪館


ウォーターワールド

――― 全国の大学生が参加するこの建築学生ワークショップは、毎年、場所を移して開催してきました。歴史と場所の特性をはっきりと持つ開催地・聖地と、周辺の生活文化を合わせて調査することにより、観光として訪れるだけでは知ることのできない地域との関わりや、建築を保全していく造り方の技に触れ、制作を含めた実学のために地域滞在を行います。計画地の歴史コンテクストを繋いで見出し、現場で建築のつくり方や解き方を探るきっかけを経験していきます。また、この夢洲は、1977年廃棄物処分地の整備が始まり、1991年には土地造成事業が開始され、2001年夢舞大橋が完成、2009年夢咲トンネルが開通しました。これまで様々な利用計画が挙がりましたが造成開始当時に計画された事業はバブル崩壊で実現せず、オリンピック招致も失敗し、これまで負の遺産と称されましたが、紆余曲折を経て、ついに2025年大阪・関西万博の開催が決定しました。近現代における主要都市の街づくりに欠かせない島の開発と、これから最も貴重となる「聖地」に身を置き、全国から集まる建築学生らがこのあらたな地に触れ、この場に位置づける建築の解釈を生み出したいと考えています。そこでこの場所の特性を用いるため、大きく分けて「歴史」「場所性(地形)」「現代の問題」の観点から提案に求めるものやワークショップ開催の目標となる言葉や意義について模索したいと考えております。次世代を担うであろう、建築や芸術、デザインを学ぶ学生たちが夢洲に身を置き、場の空気を体験しながら学びを得ることにより、貴重な経験を通じて2025年・夏、小さな建築空間を表現します。空間性へのテーマや、実現へのコンセプトのヒントとなる話題を、この座談会を通じてお聞かせください。

 本日は開催候補地として多大なご尽力をくださいます博覧会協会にて、建築や芸術、環境やデザインを全国で学ぶ参加学生に向けて導きをくださる、髙科副事務総長をはじめ、石川勝さん、藤本壮介さんにもご参加をいただき、オーガナイザーの役割を担い続けてくださいます建築家の平沼先生と共に、25年の万博会場での開催についてお聞きしたいと思います。皆さま本日はどうぞよろしくお願いいたします。

平沼:まず始めに万博の全体とテーマについて、髙科さんからお話しいただけないでしょうか。

髙科:先ほど上陸してご見学いただいた「夢洲」というUSJ近くの埋め立て地で開催する予定で、2025年4月より約半年の期間に来場者は約2,800万人を想定して開催準備を進めています。万博には「総合的な万博」と「テーマを絞った万博」の2種類がありますが、今回はそのうち大きな方の万博で、日本での開催は70年の大阪万博と05年の愛・地球博、これらに次いで我が国で3度目の開催になります。現在の準備の状況としまして、建設は23年4月の着工を目指しています。工事工区は大きく4工区に分け、それぞれの統括的なゼネコンが決定し、具体的な施工調整を始めるなか、藤本プロデューサーの大屋根(リング)の詳細イメージも発表させていただきました。全体のテーマは『いのち輝く 未来社会のデザイン』。テーマ事業のプロデューサーが8人おられ、1つずつパビリオンをつくり、それに沿う「いのち」をテーマにした世界感をそれぞれに作っていただく。そして藤本さんの考えておられる静けさの森も一つのエリアとして、大きなテーマを発信できると思います。テーマ事業というのは、70年万博では岡本太郎さんの太陽の塔、 愛・地球博では冷凍マンモスでしたが、それに次ぐ万博の顔となるプロジェクトです。プロデューサーの方々は、我々が存在している意味を問いかけて、気づきが生まれるような内容をそれぞれ独自の視点から考えていただいて、とてもワクワク感の高まる、魅力あるものになっていくのではないかと期待をしています。また、パビリオンだけではなくて、万博全体を未来社会のショーケースにしたいということで、これはショーケース事業として今後まとまったものから順次発表していくことで、世の中の関心を高めていきます。海外からは、現在約140カ国が参加表明をいただいております。10月25、26日に、IPM(インターナショナル・プランニング・ミーティング)という、各国の政府代表が初めて大阪に集まって、現場を見ていただくとともに、今後の進め方について説明し、我々とディスカッションさせていただく場がありますが、そこから海外との関係も実際にスタートすることになります。“ミャクミャク”というキャラクターも決まりましたので大いに活躍してもらって、万博でこんなことが見られるんだ、体験できるんだという期待も高め、全国で機運が盛り上がっていくような働きかけも加速していきたいと思います。また入場チケットは、23年度中に前売券の販売を開始したいと考えていますが、前売券を発売するからには、やはり魅力あるものにして、色々なPRを行って、全国での機運を高めていきたいと思っています。

平沼:石川さんは愛・地球博にも関わられたと思いますが、万博は本当に必要かという声があります。若い層には特に盛り上がってほしいなと思っているのですが、どういうメッセージを伝えたら良いでしょうか?

石川:万博と建築の話に少し触れておくと、第一回の万博は1851年にロンドンのハイド・パークを会場に、ヴィクトリア女王のご主人のアルバート公という人が率いて始められました。そこにクリスタルパレスという大きな水晶宮があったんですね。当時19世紀でまだまだ石とレンガの建築の時代だったところに、鉄とガラスの建築、それも大空間をつくるというのは画期的なことで、やっぱり万博と建築というのは切っても切れない関係性にあるのです。クリスタルパレスをつくったのは、実は建築家ではなくて造園家なんです。その方が温室の技術を使ってクリスタルパレスをつくったということを見ても、万博は常に新しい建築技術、新しいデザインの実験場だったことが窺えます。その後もたくさん万博が行われてきましたが、例えばグラン・パレとかプティ・パレ、エッフェル塔など、パリにある主要な建物は全て万博をきっかけにできています。その当時の新しい建築技術がそこで実験的につくられて世の中に出てきて、その後の街のスタンダードになっているということです。ですからこういう新しい建築の取り組みが過去の万博で見られてきた歴史があって、今回の大阪・関西万博でも藤本さんをはじめとする建築家の作品が見られることになります。愛・地球博の外国のパビリオンではモジュール形式と言って、主催者である日本側がモジュール建築を建てて、そこに外装を張り付けてやるという構造でした。今回の大阪・関西万博の敷地を渡して各国が自由に建築をつくるセルフビルド方式は’70年万博以来で、日本では50年ぶりです。ミラノやドバイなどの万博でもセルフビルド方式でしたので、各国が工夫を凝らした意匠や、構造的にもすごくチャレンジングなものが見られました。日本でそんな面白いことができる機会は建築を志す皆さんにとっては千載一遇のチャンスの場だと思いますね。万博はオリンピックと一緒で本当は参加することに意義があります。建築や周辺分野を目指している皆さんは万博にプレイヤーの一員として関わっていただけると、すごく良いと思います。振り返ると、丹下健三さんを筆頭に偉大な建築家たちは皆、万博で世の中に出てきているわけですね。若手建築家に小さな建築をつくってもらうことも一つの試みだし、建築だけではなくて、これからいろんなパビリオンでいろんなプランニングをしますから、そういうところに参加したり、自分たちの活動を「TEAM EXPO2025」として万博を通じて発信したり、会場の中での運営に携わりたいならスタッフやボランティアとして入ったり、といういろんな機会があります。せっかく自分たちが生きている時に自分たちの国で万博があるわけですから、そういうチャンスを生かしてもらえればと思います。そして万博で、「建築学生ワークショップ」が開催されるのは生きている間では一度きりになるでしょうし、大いに参加してもらえればと思います。

髙科:デザイン的にはピクトグラムも大阪万博で始まったと聞きました。そういう意味では次の時代のスタンダードになるヒントがたくさん隠れているところだと思うのです。だからこそ参加したり体験してみたりするということは、若者にとって、次の時代がどんな時代になるのかを考える上でも非常に意義のあることなのではないかと思います。かつてゼネコンさんの70年万博の記録映像を見せてもらったことがありますが、見たこともないような形状のパビリオンを、どういう技術でクリアし設計や実際の施工をするのか、建築を志す方にはめったに得られないとても良い、素晴らしい機会になるのではないかなと思いました。

平沼:生活文化を映す鏡が建築と言われます。逆に未来の生活や暮らしを予測するものが万博と捉えていけば良いのかもしれませんね。

藤本:万博では複層的に、とてもたくさんの価値観のレイヤーが入っていて、多様化した社会における特に現代の万博の特徴なのではないかと思っています。会場を設計するにあたって、「いのち」というテーマがありますが、『いのち輝く 未来社会のデザイン』というのを僕たちなりに読み替えていかないといけない。建築、会場、会場デザイン、環境デザインにおいてもこのレイヤ―が繋がるように考えていきました。いのちというのは多様なものが関係し合いながら存在します。万博は150カ国が集まるという時点で、文化も習慣も相当、多様です。それらが6ヶ月間、何らかの形で良い関係や繋がりをつくりながら共に未来を考えたり、あるいは異なる国や文化が共存していたり、新しい繋がりを見つけていくことが未来なのかもしれません。フィジカルな繋がりとは別に、時間の流れの循環もありますし、何かを受け渡してそれを他の国の人たちがどう使っていくかという意味での循環もあり得るでしょう。だからこそこの循環という価値によって生まれるサイクルは、これからの社会の大きなキーワードになってくると思います。そこでリングはやっぱり循環を想起させるということと、誰もが「つながり」をイメージすることができる象徴としてデザインしているんです。さらに真ん中に森を置くことで自然の循環や木々の生命としての循環も盛り込みたい。一方で各国のパビリオンでは、それぞれが持っている文化と未来へのビジョンを良い意味で競い合うような側面もあるので、その華やかな感じが万博のレイヤーだと置き換える。多様なものが集まることによって生まれるエネルギーを実際にドバイ博で見ましたが、それぞれの国がその国ならではの気候風土と、それをベースにした文化をちゃんと培っているというのが本当に感動的で、それを見るだけでも価値がある。そういう学びと未来が共存していると場はすごく良いことだと感じています。今までこの建築学生ワークショップは、ずっと、歴史のある聖地で開催してきました。文化や歴史的な背景に頼り、大いに手がかかりにすることで、逆に現代の建築や未来の建築をつくる時の豊かなインスピレーションになっていたと思います。万博はそういう意味では場所という意味でのコンテクストがないように見えるから、何となくかりそめのイベントみたいに見えるかもしれません。ですが、実はコンテクストは結構あって、先ほど石川さんもおっしゃっていたように万博というものの歴史があるし、それからこの場所は埋め立ての島ですが、周りを取り囲んでいる大阪・関西エリアは日本の歴史や国際交流の歴史にすごく根ざしている。いのちや多様性という概念をどう形づくるかを考えることも、大いなるコンテクストになるのではないかと思います。これからの時代の価値観を見出し、どう言葉にして、それをどう会場デザインなり建築なりに映し変えていくのかということをまさに今リアルタイムでやっています。でもそのコンテクストをそのまま引き受ける必要はなくて、それを批評的に見ても良いし、あるいはその先を考えても良い。さらに突っ込んでコンテクストなり今の世界の状況を自分たちなりに考えるプロセスは凄く価値があります。その中に持続可能な社会、それから多様なものたちが共に支えあいながら、補い合いながら共存していく社会の全体像は、2025年には常識になっていると思います。ただそれゆえに、どう実現していくのかというところはよりリアルに問われてくるのではないか。若い世代の発想力とビジョンに期待したいなと思います。

平沼:素材に関してどういうサーキュレーションを起こしていこうと考えていますか?藤本さんがおっしゃった通り、デフォルトとしてこれが一つの世界的な事例になって、それ以降建築界は素材の扱い方が変わってしまうかもしれないくらいの影響力があると思うのですが。

藤本:トータルの循環を考える良い機会なのではないかと思っています。元々寺社仏閣のような聖地だと、その敷地内でほぼ全ての循環が行われている場合が多い。それは理想的だと思うのですが、現代社会においては多少広がりのある領域の中で循環させることも意味があるのではないかと思います。周りが海に囲まれているのでその行先、持ってくる方法を含めた可能性はいろいろ広がりますし、今まで以上に能動的に考えていく。そして循環の意味を自分たちなりに「再定義」していくというのは凄く面白いと思います。

平沼:皆さんには宮島開催の様子を見ていただきましたが、この万博開催に参加される学生に、どんな希望や期待をされますか?また、実はこの万博の翌年の開催が奈良の法隆寺に決定しています。藤本さんがつくられるおそらく世界最新の木造建築がある場所から、世界最古の木造建築がある場所へ移ります。この比較からも、このワークショップの趣旨をより深く図りたいなとも考えています。参加する学生たちへ合わせてメッセージをいただけないでしょうか。

髙科:万博会場でいつどのような催事を開催するかはまだ何も決まっていませんが、それを前提に申し上げると、確かに万博は純粋な意味での聖地とは違うコンテクストが考えられると思います。参加される学生さんたちがまず、どのコンテクストから発想を深めてコンセプトを作るかという所から始まるのかなと思います。感じ方はそれぞれ違いますから、今回はコンテクスト自体、自分たちで一番強く感じるところから真っすぐにやっていく。未来社会へ向けた万博である以上、それは凄く面白いことになるのではないかなという気がしました。全体としては『いのち輝く 未来社会のデザイン』という、「いのち」が一つの大きなテーマがあって、その大きなテーマの中でそれぞれが強く感じたコンテクストで何かを作っていくという体験ができる、すごく貴重な機会になりそうです。

石川:建築学生ワークショップですが、日本を代表する聖地の方々が一堂に会するという機会は、めったにないと思いますので、この活動の素晴らしさに賛同して集まっておられるのだろうと思いますし、建築に対する社会の期待や建築業界が持っているアクティビティみたいなものがやはり凄いんだなと感じていました。聖地というのはお参りをして祈ったり、感謝したりする「営み」があるから、僕たちは聖地を聖地として感じているのだと思うのですが、歴史や未来への展望も含む営みということで考えると、万博もやはりそういう構造を持っていて、世界中から万博に出すパビリオンは、今を見つめつつ、将来に向けてこうあるべきだという提案がされていて、訪れた人はそれに向き合って自分の中の内なるものを見つめ、外に対して発信していく。ですから万博会場というのは聖地に通ずるものがあるので、建築学生ワークショップの開催場所として相応しいという文脈を持つことができると思いました。翌年、26年は法隆寺で開催するということで、世界最古の、当時の最大の木造建築の場において何らかのテーマをきっと持たれると思いますが、どうも建築業界では昔から、最初はテーマから入ったはずが、出口になると必ず意匠とか構造とか機能とか値段とかに収斂して、いつの間にかテーマがいなくなる。僕はそれがとても気になるので、折角掲げたテーマに対して手段として提案している作品がどういう意味を持つのかというところをきちんと掘り下げてもらいたいです。世界最古の木造建築と、皆がつくる作品との関連性の中で、課題やテーマに対してどのような価値があるとか、斬新だといったメッセージ性を持っているかどうかというところを問う場にして欲しいです。

平沼:ありがとうございます。その通りですね。僕も藤本さんも毎開催、伝えているつもりなのですが、だいたい無視される。なぜか聞いてくれないのです。(笑)

一同:アハハ。(笑)

石川:これこそ、日本の建築界に脈々と続いている文化でしょうね!

平沼:大阪万博が1970年、今回が2025年で、二度あることは三度あるとするならば、次の大阪万博は55年後の2080年なのかな?何となく希望と期待を持っておきたいのが大阪人の性分です(笑)。僕たちは残念ながらその頃にはこの世にいないでしょうから、このワークショップに参加する21世紀生まれの学生たちには、「当時こういうことがあったんだぞ~」という事実を継いでいってもらいたいと思うのです。ワークショップでは藤本さんの会場コンセプトをきちんと読み取り会場を見て建築に寄せて提案をする人、逆に対峙したいと挑戦してくる人が出てくると思いますが、55年後に万博があればその経験を活かしてチャレンジしてくれる人がその頃に出てきたら素晴らしいなぁと思うのです。恐らくどうしても僕たちでは直接、継げませんから、その人たちに継いでもらわないといけません。藤本さん、参加して挑戦してくる学生たちへメッセージをお願いします!

藤本:わぁ、むずかしいね(笑)。僕たちも今の信念の元にやってはいますが、それが正しいかもわからないし、50年も経つと世の中がガラッと変わるでしょう。例えば’70年万博の時には文明社会、機械、素晴らしい人工物の祭典として行われましたが、今回は自然環境やいのちがテーマです。しかし’70年に丹下さんをはじめ、建築だけではなく様々な将来を夢見たことが、今光り輝いていることは確かなんですね。それはまさに脈々と受け継がれていく中で徹底的にやり切ったことによって、それを引き継ぐ人もいれば、良い意味でポジティブに異議を唱える人もいるし、新しい価値観を打ち出す人もいる。「やり切ったこと」で、それが生み出す様々な反応がまた次の世代のクリエーションなりビジョンをつくっていくことは素晴らしいと思っています。そもそも僕たちは、100年前くらいに起こったモダニズムの動きを今も見返しながらその先を考えたりしている。「どんな小さな一歩でも未来に投げかけることはできる」のではないか。それらが多様なものと合わさって、本当の大きな未来像みたいなものとして緩やかに現れてくる。小さな一歩でも良いし、あるいは大きなストーリーを引き継ぎつつ、「その人なりの未来をつくっていく作業をずっと続けていきたい」と思ってもらいたいです。思いもよらない価値観に出会い、どんどん変化していって、それがずっと続いていくということ自体が、僕は素晴らしい出来事ではないかなと思います。

平沼:ありがとうございます!参加してくる学生の皆さんを、楽しみにお待ちしています。

         
――― 大変貴重なお話をお伺いできました。本日はどうもありがとうございました。後進で建築や環境、美術やデザインを学ぶ参加学生にとって、とても貴重で意義深い開催になるような気がします。将来、この場所で開催した意義を継いでいく提案作品を募りたいと思います。

(令和4年10月8日 大阪府咲洲庁舎43階 2025年日本国際博覧会協会にて)

編集後記
 今も歴史環境を感じる貴重な聖地を読む経験も、建築空間で自らの表現と制作する体験と、令和の日本を代表する建築家や構造家、全国の大学で教鞭を執られる先生方の厳しくも愛のある指導を受けることも、生涯の記憶に残るような幸運であったと想い返すことになる、貴重な機会となります。この大切な記憶がまたひとつ増えるような取り組みに、深く感謝をしています。

杉田美咲 (AAF│建築学生ワークショップ2025運営責任者)


 

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